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PowerShell / Java / miscellaneous things about software development, Tips & Gochas. CC BY-SA 4.0/Apache License 2.0

業務で開発したOSSは会計上の資産となるか

「業務としてOSSを開発する際は、知的財産権の扱いに気をつけること」という考えかたは、(誤解されているケースもあるとはいえ)ソフトウェアの開発を生業とする会社の間にも比較的浸透しているのではと思います。 一方で「業務としてOSSを開発する際、会計上はどのように処理すべきか」という点については、あまり意識されていないのではと思います。

何を言いたいかというと、「業務としてOSSを開発したら、会計上その成果物は資産として計上されるのか?」をはっきりさせたいということです。

なぜそんなことを考えたのかというと、業務として開発したOSSが資産にならないのであれば、さまざまなメリットがあるのでは、と考えたためです。

なお以降の内容は、日本の企業を前提として話しています。 また、筆者の専門は会計ではなくソフトウェアアーキテクチャであり、会計は「自分の会社の経理部から怒られないための知識だけはある」という程度ですのでご了承ください。

業務で開発したソフトウェアは会計上、その資金の出どころや、その用途によって、以下のように処理されます。

  • 顧客から費用をもらって開発を行い、成果物を顧客に納める場合 …… 開発費は費用として計上できる。成果物は資産にならない(契約で、著作権の譲渡や、著作者人格権を行使しないことが決まっていることが多いため、知的財産権も手元に残らない)
  • 自社の資金で開発を行い、成果物を資産とする場合 …… 開発方法に目処がついていることが前提条件(逆に、どうやったら実装できるか目処が立っていなかった場合は、成果物が出来上がっても資産にできない)。研究開発との対比で、製品開発とも呼ばれる。開発費は費用としては計上できず、そのまま成果物の資産価値になる。成果物は資産なので、そのまま業務に使ってよい。
  • 自社の資金で開発を行い、成果物を資産としない場合 …… 開発方法に目処がついていないことが前提条件(研究開発とか呼ばれる形態)。開発費を費用として計上できる一方、成果物をそのまま業務に使うことはできない(成果物をそのまま業務に使って資産が出来上がった場合、その資産の一部はお金もかけずにどこからか湧いて出たことになってしまい、資産価値を過小計上していることになるため)。業務に使いたければ、作った成果物はいったん捨てて、改めて資産とするための製品開発を行う必要がある。

成果物が資産になる製品化開発では、開発費は(資産価値に形を変えるため)損金計上できません。そのため節税に使えません。 また、資産となった成果物は完成以降5年かけて減価償却する必要があります。そのため、開発完了後も会計上マイナスに働く効果が残ります。

なので、成果物がそのまま業務に使える形になり、かつ知的財産権が手元に残った上で、しかも成果物は資産計上し……とできれば、うれしいですよね。

本研究では、自社の資金でソフトウェアを開発した場合に、その成果物をOSSとすることで、成果物を流用可能としつつ資産計上せずに済む方法を日本の法律に基づいて示すことで、会計上の動機から企業によるOSS開発を推進する方法を論じます……という研究がどこかにないかと思ったんですが、意外とないもんですね。

自分の周りで軽く聞いてみた結果「開発したソフトウェアをOSSとした場合に、資産計上しなくてもよい or 資産計上しなくても指摘を受けなかった」という会社が4社中4社でした(ただし1社は「OSSとしたソフトウェアは資産にならないが、ノウハウを貯めた社内ドキュメントが資産とみなされるかも」とのこと)。

税務署から目を付けられているかにもよるとは思うけれど、これはイケるのでは?と思うのですが、ただし、これも会計の専門家の回答ではないので、士業の人に見解を聞きたいところ……