Lazy Diary @ Hatena Blog

PowerShell / Java / miscellaneous things about software development, Tips & Gochas. CC BY-SA 4.0/Apache License 2.0

研究開発費で試作したソフトウェアの滅却のコーナーケース

日本では会計上のルールとして、研究開発費で作成した試作品は、その研究開発が終了した段階で滅却する必要があるわけです。滅却せずに済ませたいなら、作成にかかった費用を費用として計上せずに資産化する必要があります。あるいは、試作品は一度滅却したうえで、別途費用をかけて資産化のための開発を行います。

ただ、このルールは物理的な資産を前提に置いている節があります。そこで、対象がソフトウェアの場合に発生しそうなコーナーケースを考えてみました。

(1) 目と手で同じものを作成した場合

このルールは会計上「費用として計上すべき経緯で作成された試作品を、滅却させずに残して使うことで会計をごまかさないこと(また税金をごまかさないこと)」が目的なわけで、滅却した資産と一字一句同じモノがこの世に存在するのを禁止しているわけではないですよね?

なので、試作品のプログラムを左側のモニタに表示して、それを見ながら右側のモニタへタイプしたらどうなるでしょうか?

試作品を機械的に複製している訳ではなく、製品を作成する際に滅却前の試作品を参考にしているだけなので、このときタイプしたプログラムは資産として残せないでしょうか?(たとえば飛行機の試作品の写真やスケッチを見ながら、製品化する飛行機の図面を引いたとしたら、引いた図面までは滅却の対象にはならないですよね?)

この場合、タイプにかかった工数がそのまま資産化の費用になるのでは?というケースです。

(2) 研究開発費でソースコードジェネレータを作った場合

「こんなソースコードを作るジェネレータって作れないかな?」という検証を目的に、ソースコードジェネレータの試作品を作ったとします。ソースコードジェネレータ自体は試作品なので研究開発時に滅却します。では、ジェネレータから出力されたソースコードはどうなるのでしょうか?

この場合、ジェネレータから出力されたソースコードは「研究で得られたただのデータ」と判断されて、滅却されないのでは?というケースです。

(3) 研究開発をずっと継続する

研究開発が終了した段階で滅却する必要があるのなら、研究開発がずっと継続されていればいいのでは?という考えがベースです。

特にソフトウェアはどんどん改良を重ねられます。製品の製造または技術の改良に要する費用は試験研究費として計上できる *1 ので、研究開発を継続していると言えるのでは?というケースです。

また、開発から生じた無形資産は、完成する意図がなければ認識できない *2 はずです。なので、昔のGoogleみたいに「永遠のβ版です」と認識するというケースもありそうです。

(4) 学術論文として発表する

研究開発の成果を学術論文として発表します。論文の元ネタになったデータは、再現性を担保するために残しておく必要があります。

この場合「学術論文の再現性担保のために滅却しない」という判断が、法律上の正当行為 *3 になるのでは?というケースです。

(5) 自己増殖するワームを試作した場合

(2)の派生で面白そうなケースとして、自分自身のソースコードを出力・コンパイルして増殖するワームを、停止機能なしに試作したケースが考えられます。

本来は停止機能があるべきなのですが、試作品なのでまだ作っていません。停止機能がないので、そのままでは役に立ちません。そのため、無形固定資産として認識する条件は満たせません。

オリジナルのソースコードは試作品として滅却するとして、じゃぁネットワーク上で増殖し続けているワーム(と、そこから出力され続けているソースコード)はどのような扱いになるのでしょうか?