危険物取扱者免状は知事名で発行される公文書であり、かつ氏名・生年月日・顔写真が印字されていることから、本人確認書類として使おうとするケースも多いように見うけられます。一方、発行時の個人情報は自己申告でreal-life identityの確認も行われないとの話もあるようで、そうするとSP 800-63A Table 5-1ではエビデンス強度Fairとしても扱えません。
ところで、旅券法施行規則第二条二号ロには本人確認書類として「公の機関が発行した資格証明書で写真をはり付けたもの」という記載があります。「公の機関」の定義については、埼玉県*1・東京都*2・石川県*3・福岡県*4のページに記載があります。
公の機関とは、国の機関、都道府県庁、区市町村役場や国、地方公共団体の行政監視又は行政監察の対象となっている機関などをいいます。
危険物取扱者試験は消防試験研究センターが都道府県から受託されており*5、また危険物取扱者免状は知事名で発行されているので、「公の機関が発行した資格証明書」と言えそうです。つまり、他のエビデンスと組み合わせることで強度Superiorのエビデンスを取得する際のブートストラップにできる可能性があると言えそうです*6。
ただ、一般旅券の発給は法定受託事務で、実際の発給は各都道府県が行うのですが、実は何を本人確認書類として認めるかは県ごとにバラバラです。危険物取扱者免状が知事名で発行されていることを考えると、各知事の権限で「危険物取扱者免状は身分証明書じゃない!」と言っているのはちょっと面白い*7ですが、ともかくパスポート取得時の危険物取扱者免状の扱いは都道府県ごとに異なります。旅券取得時の案内には、多くの場合旅券法施行規則第二条二号ロの通り「公の機関が発行した資格証明書」と書いてあるのですが、以下の都道府県ではちょっと書きかたが違っています。
- 危険物取扱者免状を本人確認書類として明示的に「使えるよ!」と言っている都道府県
- 危険物取扱者免状を本人確認書類として明示的に「使えないよ!」と言っている都道府県
- そもそも公の機関が発行した資格証明書を本人確認書類としていない都道府県
高知県の例を見ると、他にも技能講習修了証明書*8にも同様の話がありそうです。
*1:https://www.pref.saitama.lg.jp/passport/kinyure/honninkakunin.html#niten
*2:https://www.seikatubunka.metro.tokyo.lg.jp/passport/documents/0000000373.html
*3:https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kokusai/passport/documents/hitsuyoshorui.pdff
*4:https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/honninkakunin.html
*5:http://www.shoubo-shiken.or.jp/org/history.html
*6:なお他にも、危険物取扱者免状をブートストラップにして旅券法施行規則別表第二にある本人確認書類を取得するパスもあると思いますが、それについては調べきれなかったので省略。たとえば兵庫県三木市 https://www.city.miki.lg.jp/soshiki/21/2207.html や愛媛県東温市 https://www.city.toon.ehime.jp/soshiki/12/1331.html では本人確認書類として危険物取扱者免状が使えるようです。
*7:旅券法施行規則第二条二号ロには「又はその他都道府県知事がこれらに準ずるものとして特に認めるもの」という記載があります。ただ「国が定めた本人確認書類の範囲を、都道府県知事が縮小できる」とは読めないんだけど、いいのかこれ?